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弁理士ブログ

AI創作物

2016/05/06

 昨今の人工知能(AI)は、絵を描いたり、作曲をしたり、小説を書いたりと、創作活動を盛んに行っているようです。
 その出来映えについては、いまのところ「AIが創ったものにしては」素晴らしい、という評価に留まっているようですが(私の周りではですが)、巷では、10年後には芥川賞の受賞もあり得る、という意見もあるくらいですから、これからが大いに楽しみです。 いずれにせよ、今後、AI創作物の価値が高まるのは目に見えており、内閣に設置されている知的財産戦略本部の次世代知財システム検討委員会では、AI創作物を知財制度においてどのように取り扱うべきかについての議論が進められています。

 ところで、創作活動の一つである発明に関しては、これをAIが自らなしたというニュースはまだ耳にしません。しかしながら、遠くない未来に、AI自らが発明を次々と繰り出す日が来るでしょう。

 来るその時代に備えて、特許法の整備も必要になると思いますが、その際には、おそらく、特許要件の一つである進歩性の規定も問題になるでしょう。
 進歩性について、特許法29条第2項には、
「当業者が先行技術に基づいて容易に発明をすることができたときは、その発明について特許を受けることができない」
旨が規定されています。
 ここでいう「当業者」とは、「その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者」を指し、審査基準では、「(i) 請求項に係る発明の属する技術分野の出願時の技術常識を有し、研究開発のための通常の技術的手段を用いることができ、(iii) 材料の選択、設計変更等の通常の創作能力を発揮でき、(iv) 請求項に係る発明の属する技術分野の出願時の技術水準にあるもの全てを自らの知識とすることができ、発明が解決しようとする課題に関連した技術分野の技術を自らの知識とすることができる」者、と規定されています。

 人間の場合、このような「当業者」は仮想的に想定されるものですが、AIの場合は、このような要件を満たすAIを現実にプログラミングすることが可能でしょう。
 そのようなAI(命名するとしたら、かの有名映画で名を馳せた「HAL」でどうでしょうか。)が特許庁の奥深くに鎮座して、AIが生み出した発明がこのHALに入力されると、HALが入力された発明が進歩性を有するか否かを瞬時に判断し、その一方で、入力された新しい発明で自らの技術常識を自動的に更新していく、そんな時代になるのでしょう。

 このように、AI知能が生み出す発明がAIにより評価されることになると、それはもはや、「AIによる」「AIの」特許制度であり、それが「人間のため」に用いられる保証がないように思うのは、SF小説の読み過ぎでしょうか・・・。

皇 珠子