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弁理士ブログ

失敗の共有

2018/07/03

 エジソンは「私は失敗などしていない。1万とおりの、うまくいかない方法を発見したのだ。」と言ったそうです。

 私たちは、発明者の方の話を聞き、それを特許にするための明細書と呼ばれる書類を作り、特許庁に提出します。最終的に特許を出願しようとするのですから、発明者の方が持って来られる話はすべて成功例です。数多くの失敗を乗り越え、うまく行った話だけを持って来られます。その成功の話の中から、その裏にある累々たる失敗を想像できるかどうかが、良い明細書を書けるかどうかの分かれ目です。発明者の成功した話を理解するのはそう難しくありません。発明者は丁寧に説明してくれます。しかし、発明者は失敗の話はほとんどしてくれません。成功例の裏の失敗を推測し、この方法ではなく、この方法を採用したから成功した、ということを丁寧に書くことによって、進歩性という要件が満足され、特許になります。弁理士は約4分の3が理系出身ですが、私は、理系の人は自ら技術的な失敗の経験を持つ点が強みだと思っています。

 でもやはり、失敗が続くと、くじけます。普通の人ですと、失敗を2,3回繰り返すとイヤになってきます。その2,3とおりの「うまくいかない方法」以外の方法は9997とおりあるのでしょうが、それを一つ一つやっていくと、成功するまでに何年かかるか分かりません。うまい方法は、それを100人でやることです。1人100回の失敗で済みます。ここで大切なことは、失敗を共有することです。この方法ではうまく行かないということを全員で共有することにより、100人×100回で済むのです。失敗したことを隠してしまったら、100人全員がそれぞれ1万回同じ失敗をしなければなりません。

 私たちの事務所でもよく失敗をします。書類を送り忘れたり、法律に規定があることを忘れていたりします。しかし、そのような失敗はできるだけ事務所全体で共有するようにしています。共同で仕事をするということは、失敗を共有することだと思います。逆に言いますと、失敗を正直に話して共有できる範囲が、一つの共同体だと思います。私たちは常に所内で情報を共有しながら、最良の顧客サービス提供という目標に向かって仕事をしています。

小林 良平